【映画感想】暗黒女子(2017)
奥さん、2ヶ月ぶりですよ。
原作は秋吉理香子の同名ミステリー小説。
監督は『百瀬、こっちを向いて。』(2014)、『MARS〜ただ、君を愛してる〜』(2016)の耶雲哉治。
原作は所謂“イヤミス”の傑作と言われているそうですね。
“イヤミス”ってのは「イヤな気分になるミステリー」の略だそうですが……
嫌だよ!!イヤな気分になりたくないよ!!!
と全力で思ってるタイプの人間なんですよ、僕は(笑)。
え……いや、ホントだってば、ハートウォーミングが好きなんだってば……(笑)。
しかしじゃあ何故この映画を観に行ったのかと申しますと、今年2月のこちらの記事
【読書感想】全部、言っちゃうね。千眼美子
http://frenzyarima.hatenablog.jp/entry/2017/02/26/170617
で取り上げました、芸能界引退&出家された清水富美加さん(現:千眼美子さん)の出演作品ということで。
この記事で書きました、《俳優ご本人の倫理観と作品の倫理観に乖離がある場合に、精神に不調をきたす》、その精神に不調をきたした作品って……コレなんじゃ??と。
書店のプロモーションで流してる映像を見てピンときまして。
勿論、推測ですが。
というわけで、劇場に足を運んだ次第です。
あ、ちなみに今回はネタバレは少なめにしようと思います。
興行収入も大評判ってわけでもなかったので、興味を持って貰えたら是非観てみてください。
前置きを終えまして。
結論から申しますとこの映画、結構面白いですよ!
元の期待値が低かったとこもあるのですが。
(前述通り、昨今日本映画で定期的に作られる“人間の欺き合いモノ”が個人的に嫌いなので。)
しかし、その期待値の低さを逆手に取ってくる脚本!!演出!!演技!!これが本当に素晴らしい。
あらすじ
聖母マリア女子高等学院、学院経営者の娘であり、全校生徒が憧れる白石いつみ(飯豊まりえ)が謎の死を遂げる。彼女が主宰していた文学サークルの誰かが彼女を殺したと噂が流れる中、文学サークル副会長の澄川小百合(清水富美加)は会長職を引き継ぎ、部員が自作を朗読する定例会を開催。「いつみの死」をテーマとした自作を朗読し、部員たちは各々が各々を犯人だと告発していく。
登場人物は
白石いつみ(飯豊まりえ)
会長。憧れの的。物語開始時、既に死亡。
澄川小百合(清水富美加)
副会長。物腰穏やか。いつみの親友。
高岡志夜(清野菜名)
女子高生作家としてプロデビュー済み。
小南あかね(小島梨里杏)
お菓子作りが大好き。ロリっぽい。
ディアナ・デチェヴァ(玉城ティナ)
ブルガリア人。貞子のビデオを見てしまう(嘘)。
二谷美礼(平祐奈)
特待生。校則で禁止されているが、バイト暮らし。
の6人。ほぼこの6人だけで話は進みます。
一応顧問の先生役で千葉雄大さん、いつみの父親役で升毅さんも少し話しに絡みますが。
皆さんどうです?
あらすじや登場人物を見ただけで「いかにも〜苦笑」って思いません?
これがもう、映画始まって流れるゴシック調?の音楽まで含めて、いかにも〜!の連続。
登場人物の類型的なキャラクターや、それに付随して女の子たちの演技も……いかにも〜!
お嬢様学校ステレオイメージヤバいな!!
正直「マジか〜……このノリで105分か〜……」と眉間に皺を寄せていました(笑)。
しかし
この、いかにも類型的なノリで始まるのが、後々本当〜〜〜に効いてくるんです。
文字通り、彼女たちは“演じている”ことがわかってくると……。
さらに順番に自作の小説を朗読していくというアイデアも素晴らしい。
途中フィクションラインが明らかに違う人がいたり、キャラクターの設定の割にこの内容は……と思っていると、後々ハッとさせられる!
勿論これは原作(買ったけどまだ読んでない…)の良さを脚本が引き継いでいるのだとは思いますが。
ある種「アイドル映画だからな〜」「そんなに予算かかってないしな〜」「邦画だからな〜」とナメてる人ほどショックがデカいと思います。
そう言う意味でもう1つ触れておきたいのは6人の演技力ですね。
生憎清水富美加さん以外では『貞子VS伽椰子』に出てた玉城ティナさんしか存じ上げませんでしたが。
アイドル映画的な可愛らしさは勿論保証できますけど、この映画は途中から彼女たちの造形がグッとリアルに、グッと“女子高生”になります。
特に感心したのは飯豊まりえさんのあるシーンで見せる表情と言い方(笑)。
あと平祐奈さんの、体当たりのあるシーン……あんなことさせて良いんか!!
もっと言えば、数名によるあるシーンの取り乱し演技は白眉です。
若い女の子が恐怖に取り乱す様はホント最高ですね(やめとけ。
ただですね、最後に“イヤミス”らしい?というか、まあイヤ〜なオチが付くんですけど。
そこのとこは実はそんなに……(笑)。
まあ、ね、ほら、『ミスト』とかさ、『ブルーバレンタイン』とかさ、『無垢の祈り』とかさ、そういう、客の精神を殺しにかかってくる映画も観てますんでね……。
ただ、上手い!とは思いましたけどね。
あの、ラストらへんの皆んなのね、楽しげな会話がね、笑顔がね、いや〜女の子って素敵だな〜って(笑)。
というわけで大名作!みたいな映画ではありませんが、2017年とっても楽しい佳作邦画の1つだと思います。
是非観てみてくださいな!!!
奥さん、原作はこちら。
- 作者: 秋吉理香子
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2016/06/16
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