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奥さん、ここがサブカル地獄ですよ。

別れる前にお金を頂戴。

【映画感想】世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方(2014)

奥さん、ドイツ映画だよ。

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監督は『ツバル』(1999)、『ゲート・トゥ・ヘヴン』(2003)のファイト・ヘルマー。



【あらすじ】

ドイツのど真ん中にあるボラースドルフ。

その村に住む6人の子ども達はアカハナグマのクアッチと一緒にハチャメチャで楽しい日々をおくっていました。

フツーで平凡を美徳とする大人たちは、そんな子どもたちや、彼らと仲良しのちょっと変わった老人たちに手を焼いていました。

ある日そんな村に消費者調査会社“銀色団”がやって来ます。

彼らはフツーで平凡な村人たちをマーケット・リサーチのモニターにしたいと提案、普通で平凡な大人たちは大喜び。

しかし人体実験じみた銀色団のやり方や、モニター村の立場を守ろうとする大人たちの“フツー”の強要に、子どもたち〈ハナグマ・ギャング団〉が立ち上がる!



他に観たい映画があるのに『ラ・ラ・ランド』以外観る気にならない!という病に罹って1週間。

オシャレでハッピーでかわうぃー!な映画で、精神のソフトランディングをしようと観て参りました。

大好きな名演小劇場にて。


そして案の定オシャレでハッピーでかわうぃー映画で良かった!!

てくてくてくてくと仔鴨のように暴れ回る子どもたち!かわうぃー!!

子どもたちを助けながら動き回るハナグマのクアッチ!かわうぃー!!

失敗に落ち込む子どもたちを励まし一緒に楽しい村を作っていく老人たち!ハッピー!!

美術オシャレ!衣装オシャレ!ミュージカルシーンオシャレ!!



一番感心したのは、まるで絵本を読んでいるような脚本・構成でしょうか。

特に終盤、睡眠薬で眠ってしまっていた大人たちが起きてきて、子どもたちと老人たちが作った楽しい“特別な作品”を目の当たりにしていく場面。

6つの作品を順番に見つけていく流れは、劇映画としてはもう少しスマートに見せることもできるのでは?と最初は思いましたが。

しかしあくまで、順番にその“特別な作品”がお披露目されていく構成は、ページをめくり、大きくカラフルな絵を1つずつ見開きで見ていくような絵本の楽しさそのものです。


また、これは好みが分かれる部分かもしれませんが、もっと派手な役割を持たせられなかったのかな?と感じたサブキャラクター達。

マックスのお姉ちゃん、警察官の二名、老人ホーム職員の四名、いずれも一種の敵役です。

彼らは場面場面で登場し、子どもたちに“フツーで平凡”を強要する大人側の人々です。

そんな彼らなんですが、実は子どもたちによって痛い目に遭う場面がほぼ無いのです。

ハチャメチャな子どもたちに逆襲される、言ってしまえば『ホームアローン』的な。

コメディ的にとても美味しい敵役でありながら、彼らにはその見せ場が無いのです。

警察官がパトカーを壊されたくらいでしょうか?(すごく笑った)

これは以前同人で絵本の文を書いた時に思ったのですが、絵本は1ページずつの絵と文の情報量がとても制限された、だからこそ面白い表現方法です。

物語を追う視点も基本的に直線であまり移動はできませんから、サブキャラクターの行動や心情の描きこみには向かない部分があると思います。

敵役たちの役不足な印象は、なるほどやはり“絵本を読んでいるかのような”作りへのこだわりによるものでしょう。

(そういう意味では、わかりやすいスラップスティックコメディを期待すると肩透かしかもしれません。)



もう一つ、メッセージは普遍的で描き方も素晴らしいです。

大人たちはフツーで平凡であろうとする、安定を求めリスクには近寄らない。

しかし子どもたちは自由であります。

パンを空に飛ばしたい。

潜水艦や飛行機に乗りたい。

ゴミを自転車や楽器に変えてみたい。

失敗するリスクなんて気にしないんです。


そしてこの映画の大きな魅力は、失敗した子どもたちを老人たちがサポートすること。

かつて偉業を成した、ちょっと変わった老人たちは純粋で自由な子どもたちの友達です。

子どもたちが行動を起こす決定打になるのも、大好きなおじいちゃん・おばあちゃん達が強制的に老人ホームに入れられてしまったことです。

しかしその後おじいちゃん・おばあちゃんが老人ホームを脱出すると、子どもたちの失敗によって村はメチャクチャ。

子どもたちが描いた設計図を見た6人の老人たちは、協力して皆んながアッと驚くようなものを作ろうと、ションボリする子どもたちを励まします。

この映画の老人たちは子どもたちの友達であると同時に良き師匠でもあるのです。



ちょっと話しはズレますが、昨今のディズニー映画はテーマ性も強く、脚本もキッッッチリ練られています。

大人も子どもも楽しめるエンタメ映画ではあるんですが、一方で工業的・人工的なモノを観ている感じがする人もいるのでは無いでしょうか?

粗がなさ過ぎて可愛げが無いと言うか(笑)。


この『世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方』は、そういう意味でキッッッチリした映画ではありません。

しかし僕らの人間性を肯定する、優しさ溢れる映画です。

思い出してみて下さい。

フツーだなんてつまらない!

誰もが子どもの頃、胸ときめく設計図を紙に描きとめたのではないでしょうか。

秘密基地を、潜水艦を、飛行機を、機関車を、楽器を、とんでもないマシーンを。


お子さんに楽しい絵本を読み聞かせるように。

また、フツーで平凡なんて望んでなかった子どもの頃を思い出しながら、是非ご覧くださいませ。




奥さん、ハナグマ可愛いよ。